五十音表にひとつ足すなら、何がベスト?

1行サマリ

五十音表に音素を1つ追加する思考実験を入り口に、現代日本語ラ行の L 化や歌詞の単語境界誤認、関西難読地名など複数トピックを扱うお便り回。

要点

  • タイトルの「五十音にひとつ足す」は冒頭12分のみ。残り33分は無関係な複数の言語ネタを扱うお便り回
  • 現代の若い日本語話者の一部はラ行を実質 L で発音している。米津玄師「感電」の「夜の往来」が「夜のオライ(L)」になっている例が紹介される (japanese-ra-l-shift)
  • 歌の歌詞で本来の語アクセントがメロディに従属することで、語境界の認識が崩れる事例: 「主はきませり」を1単語と思い込む、椎名林檎の歌詞「五感」を「股間」と聞き間違える、など
  • マキシマムザホルモン「絶望ビリー」(デスノートOP)の裏歌詞: 「面のワールド/制裁のワード」が「Neo Slight World / Suicide Word」と読める。ワールドとワードの韻が踏む位置に L がない=「L のない世界」と解釈
  • 関西の難読地名(京終キョウバテ・水走ミズハイ・喜連瓜破キレウリワリ)は「関西の選民思想で残った」のではない。沖縄・北海道にも難読地名は同等にある。むしろ渋谷の「谷=ヤ」が東日本方言由来であり、関東基準を標準語にした副作用で他地域の地名が相対的に難読化している (shibuya-no-yakansai-nandoku-chimei 内で言及)
  • 前作「女数シズハ先生」(SM体験記投稿者) の意思を継ぐ女性投稿者「アイグレック」氏の長文お便り紹介。文学性と構成力が高く、新ジャンルとして評価される

構造化サマリ

五十音表に音素を1つ足すという思考実験 (0–12分)

mizuno-taiki からのお便り紹介で開始。投稿者パラレルコンプ氏が水野に「五十音表に1行1列足すならどんな子音や母音を足したいか」と問う内容。

母音候補: エの中間音(英語の æ 系)を追加すれば「赤さな」のように行が増やせるが、日本語話者にはエの異音として処理されてしまうため聞き分けが難しい。子音候補: クリック音(下打ち音、アフリカ諸語に多い)、両唇ふるえ音(B)、巻き舌の R、ニハウ音などを発音実演しながら吟味。「下打ち音が言いやすく聞き取りやすそう」が暫定の結論。

ここから日本語ラ行の話に展開 (japanese-ra-l-shift)。日本語のラ行は弾き音で、英語の R(舌持ち上げ)とも L(舌を前歯につけて側面から出す)とも違う。しかし現代の若い話者の一部は実質 L で発音している。

典型例として yonezu-kenshi の歌唱が挙げられる。「感電」冒頭の「夜の往来」が「夜のオライ(L)」になっていることを実音確認するくだりがある。模倣アーティスト松浦大はこれを忠実に L で再現できているという指摘。サ行が TH 化するという古い観察は、現代では確認できない。

結論: お便りへの答えとしては「正解を出すよりこのテーマで言語学者や発音 YouTuber と朝まで飲みたい」。発音 YouTuber の人物に対する尊敬の話として、その人物が「学歴コンプレックスが理解できなかった、自分は東大生より発音がうまいから」という自分軸の生き方を持っていたエピソードに水野が感動した話が挿入される。

お便り: 名前の誤パースと歌詞の単語境界 (12–25分)

「花まちく」氏のお便り: 友人が社会のテストで「坂上田村麻呂」を「坂・上の・田村・まろ」と誤パースし不正解になった話。堀元の「亀井戸の五郎さん」(=亀井戸という地名+五郎さん)を「亀井殿という貴族みたいな名前の五郎さん」と長年信じていた体験談、親戚を「鈴鹿の」「稲の」など地名+「の」で呼ぶ習慣との関連性が議論される。

ここで tokyo-accent-rules が単語境界の検出メカニズムとして応用される (accent-as-word-boundary)。「青大将魚」が1単語なのか「青大将+魚」なのかは、アクセント型を見れば分かる。1単語のアクセントは1回しか下がれないので、2回上がる(=途中で再上昇する)型は複数単語の合成である証拠になる。

「主は来ませり」を「主きませり」というロシア語っぽい1単語と勘違いしていた堀元の体験。歌では本来のアクセントがメロディに従属するため、語境界の手がかりが失われて単語誤認が起きやすい。椎名林檎「先攻少女」の「五感を持っておいで」を「股間を持っておいで」と聞き間違えていた例、「丸の内サディスティック」の「青噛んで」が「青姦んで」と聞こえる例も同種。

歌詞カードと実音が異なる可能性を検出するスキルとして furudo-genngogaku (フィールド言語学) が紹介される。フィールド言語学者が外国語の音を一発で IPA に書き起こすリバースエンジニアリング能力に対する敬意。

最後にマキシマムザホルモン「絶望ビリー」(デスノートOP)の裏歌詞。「面のワールド/制裁のワード」が英語裏読みで「Neo Slight World / Suicide Word」と解釈できる仕掛けが紹介される。ワールドとワードの韻が踏まれる位置から L が脱落している=デスノートの主要キャラ「L」の不在を表象している、という解釈に二人とも興奮し「金取れる」「アニソン作家として営業をかけろ」と盛り上がる。

お便り: 関西の難読地名は関西だけのものではない (25–35分)

「ドングリ」氏(ベランダコンポストで麦と藍を育て5年がかりでパンを作る人物、と自己紹介する人)からのクイズ形式お便り。

3問の関西難読地名クイズ:

  • 京終 (きょうばて、奈良): 終=「果て」と読む推測まで行ったが、正解は連濁付きで「きょうばて」
  • 水走 (みずはい、東大阪): 走→「はい」は onbin (音便、S脱落)。「刺す→刺手→さして→さいて」と同型の歴史的音変化
  • 喜連瓜破 (きれうりわり、大阪): 4文字に見えるが6音節、重箱読み + 湯桶読みが混在する珍しい組み合わせ

送信者の仮説「関西方言話者の選民思想で難読地名が生き残ったのでは」に対し、水野は否定的見解を示す。沖縄の「谷=タン」(山原ヤンバル・北谷チャタン)、鹿児島の「南風原ハエバル」、北海道のアイヌ語起源(倶知安クッチャン=「冠を取った当て字」)等、関西以外にも難読地名は同程度に存在する。

決定的な反証: 渋谷の「谷=ヤ」は実は東日本方言由来。「谷」の音読みは黒・ロクであり、「ヤ」は関東〜東北の古い方言「ヤチ(谷地)」の短縮形に由来する(漢字文化資料館の記述)。標準語が関東方言を基準にしたために「谷=タニ/ヤ」が正規化されただけで、視点を変えれば関東の選民思想で他地域の地名が相対的に難読化しているとすら言える。

お便り: 女数シズハ先生の後継者 (35–45分)

過去の人気投稿者「女数シズハ先生」(三島由紀夫・谷崎潤一郎風の文体で SM 体験記を送ってきたメメ的存在) の意思を継ぐと宣言した「アイグレック」氏からの長文お便り紹介。

冒頭のセリフ「あなた確か相当テンション高いのが好きだったよね」(ここでの「テンション」は緊縛業界用語で縄の締め具合を指す、というメタ解説あり)、縄掛けのシーンから一見男性視点に読めるが、語り手が「私のヴァギナが」と明かすことで女性であることが判明する構成。さらに「縛り手の女王様」と「他の客の谷崎・三島・自島(=男性器の比喩)」の対比から、レズビアンとして女王様への片想いに苦しむ女性独白だと種明かしされる。

堀元と水野は「文学性が高い」「女数シズハの絶頂欲望系とは対照的な恋愛系の新ジャンル」「女性同士で女王様役と被支配役という構図」と評価。署名「アイグレック」は y(ラテン文字)を意味し、yurugengo→Jürgen Klopp→ゲーゲンプレスの連想で「芸プレス」をリクエストする伏線になっている、と読み解く。

「孤独な作業として日記を構成し直して投稿する」行為自体への肯定的評価を共有し、リスナーにも気楽な投稿を促して締める。

登場エンティティ・コンセプト

印象的な引用

このお題で言語学者と朝まで飲みたい。これが結論になります。

(五十音表に何を足すかというお便りへの結論。「答えを出すよりわちゃわちゃ喋ってる過程が面白い」)

ワールドとワードって図見ると何が消えてます?……Lが消えてんじゃないですか?……デスノートの主要キャラクターって誰でしたっけ?……おお、Lだ。

(マキシマムザホルモン「絶望ビリー」裏歌詞の L 脱落とデスノートの L の対応を発見する瞬間)

関東の方言を標準ごと定めたということと無関係ではない……だからむしろ関東の選民思想のせいで他の場所の致名が読みづらくて変だなってなってる可能性もあるわけですね。

(関西難読地名は関西特有の現象ではなく、関東方言の標準化による相対的効果である、という整理)