空間化による意識(ジェインズの意識論)
ジュリアン・ジェインズが『神々の沈黙』で示す、意識とは何かについての説。意識が果たす最重要の働きは「空間化」だとする。手足や地球などを心に思い浮かべると、頭の中の空間に次々と配置され広がっていく。本来は順序を持たない時間を心の空間に左から右へ並べる「時間の空間化」こそ、意識が生まれた決定的な瞬間だと論じる。
考えるきっかけと方向性が与えられると自動的に連想が湧く現象を「ストラクション」と呼び、人間の思考はこの連鎖で進むとする。意識はその連想を心の空間上のイメージとして操作し、深い思索を行う。
空間化の背景には言語、とりわけ比喩の発達があるとする。比喩は現実に存在しないものを別のものに喩えて表す働きで、これが心の空間を作り出した。日常で脇役に見える比喩が人間の意識そのものを生んだ、というのが本書の核心的な指摘。
この空間化の獲得が二分心を衰退させ、神々の声に代わる新しい主体としての意識を台頭させたとする(see cNvQZYrkA-k)。
ベルクソンの時間の空間化論(see HXnw_SF6yO8)と、心的なものを空間に置き換える操作に注目する点で響き合う。ただしジェインズは空間化を意識を生んだ肯定的な起源とみなすのに対し、ベルクソンはむしろ精神を物のように対象化し決定論の錯覚を生む誤りとみなす。