二分心

ジュリアン・ジェインズが『神々の沈黙』で提唱した、古代人の精神構造。右脳に由来する「神々の声」を左脳(ウェルニッケ野)が聞き取り、それに従って行動する、二つに分かれた心を指す。当人は自分で内省して決めているのではなく、外から降ってくる声に従っているだけで、現代的な意味での意識を持たない。

この仕組みが古代文明を可能にしたとする。古代メソポタミアではジッグラトに神像を祀り、王や神官がその声を聞いて統治した。古代ギリシャの叙事詩『イリアス』の英雄が内省ではなく神々の声に従って動くのも、二分心の現れとされる。今日の手がかりとしては、本人に命令する統合失調症の幻聴が挙げられる。

紀元前1200年頃、戦争や民族移動の大混乱で神の声に基づく統治が機能しなくなり、同時に文字と比喩の発達で空間化が進んだことで二分心は衰退、意識が台頭した。神々の声が消えた空白に哲学や宗教が生まれたとする(see cNvQZYrkA-k)。

意識を後発的・構成的なものと見る点で、[passive-consciousness-hypothesis|受動意識仮説]と関心を共有する。ただしジェインズは意識の歴史的起源を、前野は意識の機能的位置づけを論じており、主張の射程は異なる。