ジェインズの「私たちの心ができたのは最近」
概要
ジュリアン・ジェインズが唱えた、意識は約3000年前に生まれたという説を紹介する。人間はそれ以前も自動操縦的に行動できたが、発達した言語と比喩が「心の空間」を形成した。仮想の自分と未来の結果を思い描く能力から、主観的な「私」が成立したという議論。自分の思考を見ている主体は誰なのかを問い直す。
要点
- ジェインズは、意識が人類に固有であり、言語の発達後に生じたと考えた。
- 人間に意識が生まれた時期を約3000年前と位置付け、古代文明の成立よりも新しい現象として捉える。
- 意識以前の行動は、運転や自転車、楽器演奏のような手続き記憶による自動操縦に近い。
- 「内面」や「心の中」といった空間的な比喩が繰り返され、意識が働く仮想空間を作った。
- 言語によって仮想の自分と仮想の結果を思い描けるようになり、意思決定を行う主観的な「私」が生まれた。
構造化サマリ
導入とジェインズの経歴
冒頭では Zoom ミーティングに入れず焦ったという短い雑談から始まり、前回までに続く議論として意識の問題を取り上げる。ジュリアン・ジェインズはアメリカの心理学者で、学生時代には動物行動学に貢献し、大学卒業後にはイングランドで俳優や劇作家としても活動したと紹介される。
意識は約3000年前に生まれた
ジェインズは、意識は人類にのみ生じ得るもので、言語が発達した後の出来事だと主張した。人類には意識のない時代があり、約3000年前の社会的混乱の中で意識が誕生したという見方である。これは古代ギリシャや古代エジプトの文明が存在した時代、日本では縄文時代の終わり頃に相当する。
意識以前の自動操縦
意識のない状態を説明する例として、運転中に逐一自分へ指示を出さなくても行動できることが挙げられる。自転車や楽器演奏も、反復練習によって身体が覚えると、強く意識せずに実行できる。意識以前の人間も、食事、移動、仕事をこのような自動操縦的な状態で行っていたという説明である。
言語と比喩が作った心の空間
言語能力が発達すると、物事を身近なものに言い換え、比喩で表現できるようになる。「心の中」や「内面」という言葉は、比喩によって成立した心的な空間を示す。空間化された比喩としての意識は、言語による反復の中で自らを生成し続け、主観的な「私」へと発展した。
仮想の自分と結び
人は仮想空間の中で自分の行動と結果を想像し、その見通しに基づいて決意を固める。この仮想の自分、仮想の結果、仮想空間を生み出したものが言語だという。最後に、自分の考えは本当に自分の考えなのか、内面を見ている主体は誰なのかという問いを提示して締めくくる。
登場エンティティ・コンセプト
- julian-jaynes — 意識は約3000年前に言語とともに生まれたと唱えた心理学者。
- bicameral-mind — 意識成立以前の人間の心を説明するジェインズの仮説。
- consciousness-as-spatialized-metaphor — 言語の空間的な比喩が「内面」と意識を形成したとする考え。
- linguistic-articulation — 言葉による区切りや比喩が、認識する現実を形作る作用。
印象的な引用
意識は人類においてのみ生じ得たもので、それは言語が発達してからの出来事に違いない。
この仮想の自分や仮想の結果や仮想空間を生み出したのは、言語である。
私の考えは本当に私の考えなのか、私が私と思っているのは本当に私なのか。