神々の沈黙 | 【哲学・歴史学】の必読書! | 人間が意識を獲得したのはわずか3000年前だった?
概要
ジュリアン・ジェインズの『神々の沈黙』を解説する書評動画。人類が意識を獲得したのは約3000年前(紀元前1200年頃)にすぎず、それ以前は二分心という別の精神構造に従っていたと論じる。二分心とは、右脳由来の神々の声を左脳が聞いて従う、二分された心で、これが古代文明を可能にした。文字と比喩の発達で空間化が起き意識が台頭、神々の声は消え、その空白を埋めるように哲学や宗教が生まれたとする。
要点
- 人類は約3000年前まで意識を持たず、神々の声に従う二分心という精神構造で生きていた。ピラミッドやジッグラトはこの状態で築かれた
- 二分心は右脳由来の「神々の声」を左脳(ウェルニッケ野)が聞き取り従う仕組み。命令する声に従う統合失調症の幻聴がその名残と説明される
- 意識の核心は「空間化」。とりわけ時間が心の空間に並べられた「時間の空間化」が意識誕生の決定的瞬間だとする(consciousness-as-spatialized-metaphor)
- 古代ギリシャの叙事詩『イリアス』の英雄は内省ではなく神々の声に従って行動する。これが二分心の証拠とされる
- 紀元前1200年頃、戦争や民族移動の混乱で神の声に基づく政治が機能しなくなり、同時に文字と比喩の発達が空間化を生んで二分心が衰退、意識が芽生えた
- ジェインズの説が全て正しいとは限らないが、比喩という日常の脇役が意識を作り出したという指摘が動画の見どころとされる
構造化サマリ
問い:人はいつ意識を持ったか
普通は人類誕生以来ずっと意識があると考える。だが『神々の沈黙』は、意識が生まれたのは今から約3000年前(紀元前1000年前後)だと主張する。とすると、古代の大文明やピラミッド・ストーンヘンジは意識のない状態で築かれたことになり、奇妙に思える。著者ジュリアン・ジェインズはアメリカの心理学者で、本書が生涯唯一の著作。心理学・脳科学・哲学・文学を横断して書かれている。
意識とは何か:ストラクションと空間化
ジェインズは、日常の行動・学習・思考の多くは意識なしで成立すると見る。考えるきっかけと方向性が与えられると自動的に連想が湧く現象を「ストラクション」と呼ぶ。意識が果たす最重要の働きは「空間化」だとする。手足や地球を一つずつ心に思い浮かべると、頭の中の空間に配置され広がっていく。本来は順序のない時間を心の空間に左から右へ並べる「時間の空間化」が、意識が生まれた決定的な瞬間だと論じる(consciousness-as-spatialized-metaphor)。
古代人の精神構造:二分心
古代人の脳は、言葉を理解する左脳(ウェルニッケ野)に加えて、何が善で何をすべきかを告げる「神々の声」が右脳に存在し、それを左脳が聞き取って従っていたとする。これが二分された心=二分心。にわかには信じがたいが、本人に話しかけ命令する統合失調症の幻聴が手がかりになる。初めてこの声を聞いた患者の多くは命令に従うという。古代ギリシャの『イリアス』では、アキレウスやヘクトールら英雄が内省ではなく神々の言葉に従って動く。古代メソポタミアではジッグラトに神像を祀り、王や神官がその声を聞いて戦争などを決めていた。
意識の台頭と神々の沈黙
紀元前1200年頃、大規模な戦争や民族移動の混乱が生じ、神の声に基づく統治では対応しきれなくなった。加えて文字と比喩が発達し、現実にないものを別のものに喩える働きが心の空間(空間化)を生み、意識の原型ができあがった。二分心が衰退し神々の声が聞こえなくなると、人々は何に従うべきか途方に暮れる。その空白に芽生えた意識と向き合う形で、哲学や宗教が生まれたとする。
評価
動画の解説者は、ジェインズの主張すべてが正しいとは思わないと留保しつつ、比喩という日常で脇役に見えるものが実は人間の意識を作り出したという指摘を高く評価し、芸術と人間の関係を考えるヒントになるかもしれないと締める。
登場エンティティ・コンセプト
- julian-jaynes — 『神々の沈黙』の著者。アメリカの心理学者
- bicameral-mind — 神々の声に従う、二分された古代人の心
- consciousness-as-spatialized-metaphor — 言語と比喩による空間化が意識を生んだとする説
印象的な引用
人の意識が生まれたのは今から3000年前、つまり紀元前1000年前後だ。
比喩という日常生活で脇役に感じられるものが、実は人間の意識を作り出した。