生物はなぜ老いて死ぬのか

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概要

東大の老化研究者 小林武彦が、生物の死を「機構」と「意味」の二面から解く講義。プラナリアやクマムシを含め全生物は必ず死に、その仕組みは ゲノムの崩壊にある。38億年前の自己複製RNA(rna-world-hypothesis)に死の起源を遡り、複製できなかった分子の分解を「最初の死」と捉える。死の意味は進化(death-as-evolutionary-necessity)で、世代交代がなければ生物は変化も選択もできない。後半は繁殖後も生きる「老い」に移り、ヒト固有のこの特徴を利己から利他への変化(grandmother-hypothesis)として位置づける。

要点

  • 全ての生物は必ず死ぬ。プラナリアやクマムシも不死ではない。死に方はプログラム死・被食死・老衰など多様
  • 死のメカニズムは ゲノムの崩壊。DNA修復遺伝子が壊れる早老症や、哺乳類の寿命とDNA変異率の逆相関がその証拠
  • 生命の起源は自己複製するRNA(rna-world-hypothesis)。複製できなかった分子の分解が「最初の死」だと小林は考える
  • 死の意味は進化(death-as-evolutionary-necessity)。壊れて世代交代が起きなければ進化できない。死があるから今の生物が存在する
  • 老い(繁殖後も生きる期間)はヒト・シャチ・ゴンドウクジラだけにある。陸の哺乳類ではヒトのみ
  • ヒトの老いの意味は 利己から利他への変化。年長者の貢献で集団が栄えた(grandmother-hypothesis)

構造化サマリ

死を研究するきっかけ

講師は東京大学定量生命科学研究所の 小林武彦。専門は老化で、死そのものは研究しにくいと前置きする。死を考え始めた契機は2つ。息子のカブトムシが盆を過ぎると一斉に死ぬのを見て「なぜ死ぬのか」と問われたこと。もう1つは研究対象の酵母(約6000遺伝子)に、壊すと寿命が延びる「死なせる遺伝子」が200以上見つかったこと。死に有利な意味があるのではと問いを立てる。

全生物は必ず死ぬ

プラナリア(切っても再生するが25℃超で死ぬ)とクマムシ(極限環境に強いが約2か月で寿命死)を例に、不死に見える生物も死ぬと示す。昆虫やセミはプログラム的に死に、カゲロウは成虫が数十時間。ネズミやマグロは食べられて死ぬ。精巧に進化した体をなぜわざわざ壊すのか、という生物学の大疑問につなぐ。

死の起源とゲノム損傷

全生物が死ぬなら最初の生物も死んだはず、と38億年前へ遡る。熱水噴出孔でRNAが生成され、自己複製と変化しやすさの2性質を持つ(rna-world-hypothesis)。複製しやすく壊れにくいRNAが材料を独占し、複製できなかったものが分解する——これが最初の死だと小林は述べる。現在も同じ関係が続く証拠として、DNA修復遺伝子の変異で起こる早老症(ウェルナー症候群など7種)と、哺乳類の寿命がDNA変異率と逆相関するNature論文を挙げる(genome-instability-aging-theory)。ヒトは長寿動物のDNA修復遺伝子をマウスへ移植して寿命決定遺伝子を探る研究も紹介する。

死の意味と老いの意味

死のメカニズムはゲノムの崩壊だが、意味は進化にある。壊れて世代交代が起きなければ進化(変化と選択)は進まない。死があるものだけが進化して存在する(death-as-evolutionary-necessity)。後半は老いへ。日本は世界一の超高齢社会で、平均寿命は延びても限界寿命は変わらない。老いはヒト・シャチ・ゴンドウクジラだけに見られ、陸の哺乳類ではヒトのみ。裸の猿であるヒトは集団での子育てが必要となり、年長者(特に祖母)が知識と利他性で集団を支えた(grandmother-hypothesis)。小林は老いの意味を 利己から利他への意識変化とし、社会貢献のために獲得されたヒト固有の特徴だと結ぶ。

登場エンティティ・コンセプト

印象的な引用

死というものがあるから進化できて、今、存在している。

元々おいっていうのは社会貢献のために獲得された人だけの特徴だと胸を張っておりましょう。