生命は “予測誤差” を食らう:なぜ人は酒を飲みすぎるのか【集合的予測符号化②】

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概要

[collective-predictive-coding|集合的予測符号化]シリーズ第2回。「生きる=予測する」を出発点に、生物は事前の予測と結果の差を縮める 予測誤差最小化をしていると説く。だが安定に留まらず新天地に飛び込む個体もいる。そこで「生きる=予測誤差を食らう」と捉え直すと、探索や生物多様性が説明できる。背景の ドーパミンの報酬予測誤差はギャンブル中毒も説明する。他個体から情報を得る=集合的な予測が、社会と言語の起源につながる。

要点

  • 働く・遊ぶ・食べる、いずれも良い結果を期待(=予測)する行為。期待値は予測の一種
  • 生物は 予測誤差を最小化する。植物プランクトンの走光性やコップを掴む動作もこれで説明できる
  • 全生物が最適点に留まると多様性が説明できない。安定を捨て新天地へ向かう個体がいる
  • 書籍『行為する意識』の視点=予測誤差を食らう。誤差はなくすものではなく求めるもの
  • ドーパミンニューロンは予測を上回る報酬で多く出る。しつけやギャンブル中毒の仕組み
  • 他個体から情報を得る=集合的な予測。効率的な予測が社会を作り、言語を生む

構造化サマリ

生きる=予測する

働くのは賃金を、趣味は楽しさを期待するから。期待とは予測であり、期待値は予測の一種。生物も餌・繁殖相手・天敵の有無を環境から予測して行動する。未知のものに遭遇した時に予測は顕著になる。勇気を出して食べて予想以上に美味しければ、次も食べる。

予測誤差最小化

初めて食べた時の予測と結果の差(誤差)が、次回は上方修正されて小さくなる。つまり生物は 予測誤差を最小化している。光に向かう植物プランクトンは最適な光量との差を埋めるよう動き、行き過ぎれば戻る。最適点を知らずとも誤差の増減だけで適所に至る(フィードバック制御)。コップを掴む動作も、腕の位置の予測と実際のズレを無意識に最小化するものとして説明できる。空腹・金銭・社会的要求など複雑な欲求の葛藤も根っこにこの原理がある。

予測誤差を食らう

予測誤差最小化だけだと全生物が最適点で止まり、多様性が説明できない。実際には安定を捨て予測誤差の大きい新天地に飛び込む個体がいる。書籍『行為する意識』は「生きる=予測誤差をなくすこと自体が目的」とし、これを 予測誤差を食らうと表現する。各生物が自分なりの探索をした結果、多様性が生まれたと考える。

報酬予測誤差とドーパミン

脊椎動物では予測誤差が大脳基底核で計算され、ドーパミンが要になる。ドーパミンニューロンは予測を上回る報酬で多く出て、予測より悪いと抑制される。しつけ(お座り→ご褒美)で行動を強化し、ギャンブル中毒の背景にもなる。胴元は頻度主義的に、打つ本人は ベイズ的に(負けを忘れて)推論するズレが中毒を生む。

集合的な予測から社会・言語へ

他個体から情報を得れば予測精度が上がる。これは集団として予測する=「集合的に予測する」こと。効率的な予測を求めてコミュニケーションし、集団=社会を作り、さらに効率的な伝達のために言語が生まれる余地ができる。逆に社会や言語が個々の人間を動かし、人間集団全体が上位の主体として予測的に振る舞うとも捉えられる。

登場エンティティ・コンセプト

印象的な引用

生物にとって予測誤差っていうのはなくすべきものなんじゃなくて、あって食らうものなんだ。