身体感覚とともに生きる

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概要

藤野正寛が、10日間の瞑想リトリートで得た体験と研究をもとに、マインドフルネスを「無になること」ではなく、感覚・感情・思考に気づく状態として語る。身体感覚は外部刺激や思考に伴って生じ、無意識の評価や意思決定に関わる。身体感覚への気づきを育てることで、ストレスとの関係や日常の選択が変わる可能性を示す。

要点

  • マインドフルネスは感覚・感情・思考を消すことではなく、今ここで生じているものに気づく状態を指す。
  • 瞑想リトリートでは「足が痛い」から「足に痛みがある」へと、感覚との関係が変化した。
  • MRI研究では、感覚や感情そのものよりも、それらと主観的・客観的に関わる切り替えに関係する脳領域の変化が示された。
  • マインドフルネスは単なるリラックスではなく、覚醒しながらストレスが下がっている状態として説明される。
  • 身体感覚は、視覚・聴覚・思考・イメージに伴って生じ、対象への好き嫌い・信頼感などの評価に使われる。
  • 子どもの道徳教育や大人の進路選択でも、身体感覚を手がかりにすることで、頭だけでは出ない判断が生まれる。
  • 繊細な思いやりや温かさに伴う感覚に気づくには、強い刺激を減らし、注意を丁寧に育てる必要がある。

構造化サマリ

リトリート体験から研究へ

藤野正寛は、医療系企業で働きながら、人々の健康に関わる仕事をしている一方で、自分自身の身体と心に緊張やストレスをため込んでいた。緩め方がわからない状態のなか、京都で行われた10日間の瞑想リトリートに参加する。

リトリートでは、会話もスマホもパソコンもなく、1日10時間ほど瞑想を続ける。最初の数日は眠気、足の痛み、感情、思考に圧倒されるが、5日目以降、感覚や感情や思考と一体化せず、それらに気づく感覚が育っていく。

終盤には身体の緊張が消え、心が深く静まる体験に至る。この体験を苦しみを抱える人に届けたいと考え、会社を辞めて京都へ移り、認知心理学やMRIを用いてマインドフルネスの研究に取り組み始めた。

マインドフルネスの3つの特徴

動画では、マインドフルネスを「今この瞬間に生じている感覚・感情・思考に、振り回されず、抑え込まず、判断せず、ありのままに気づいている状態」と説明する。第一の特徴は、無になることではない点にある。手のひらへ注意を向ける体験を通じて、普段から存在している身体感覚に、注意を向けたとき初めて気づくことを示す。

第二の特徴は、感覚や感情や思考を変えるのではなく、それらとの関係が変わること。足の痛みを「自分が痛い」と感じる状態から、「足に痛みがある」と観察する状態へ移るように、囚われずに見守る関係が生じる。藤野らのMRI研究では、感覚や感情に関わる領域そのものではなく、主観的・客観的な関わりの切り替えに関係する脳梁膨大後部皮質の活動変化が見られたという。

第三の特徴は、マインドフルネスが単純なリラックスではないこと。生理指標では副交感神経ではなく交感神経の活動が高まり、一方でストレスに関わるコルチゾール値が低下していた。動画では、宮本武蔵が多数の敵と向き合う比喩を用い、全体に気づきながら一つ一つに囚われない覚醒状態として説明する。

身体感覚が世界の評価を形づくる

マインドフルネス心理学では、外部刺激が五感に触れたり、頭の中で考えたりイメージしたりすると、必ず身体感覚が生じるとされる。黒板を引っかくような刺激を想像させるスライドを使い、同じ刺激でも人によって頭、顔、腕、背中、胸など異なる部位に感覚が出ることを示す。

藤野は、今聞いている声や考えただけの内容にも身体感覚が伴い、その感覚を使って、人は無意識に「好きか嫌いか」「信頼できるか」を評価していると述べる。つまり、人はさまざまな体験から生じる身体感覚に従い、知らず知らずのうちに対象を評価している。

瞑想によって身体に生じる感覚へ気づけるようになると、自分が体験に対してどう感じているかを意識的に把握しやすくなる。この点が、医療や教育でマインドフルネスに基づくプログラムが広がる理由として語られる。

教育・意思決定・日常生活への応用

小学校のプログラムでは、「嘘をついてはいけない」と規範だけを教えるのではなく、嘘をついたときに身体のどこにどんな感覚が生じるかを子どもに尋ねる。子どもが「胸がちくちくする」「お尻がそわそわする」と答えたら、その感覚が心地よいかどうかを確かめる。

この方法は、大人の意思決定にも当てはまる。旅行先、会社選び、退職するか残るかといった選択を頭の中で考えるだけでも、身体には感覚が生じる。その感覚に気づくと、頭だけで考えても出なかった答えが浮かぶことがある。

ただし、強い刺激による大きな感覚は気づきやすい一方、思いやり、優しさ、温かさのような繊細な刺激が生む感覚は微細で気づきにくい。だからこそ、瞑想を深め、強い刺激を減らし、注意集中力を育てることが重要になる。

静けさの中で感覚とともに生きる

藤野は10日間のリトリートで、会話やデジタル機器を断ち、強い刺激を減らすことで、身体の中の強い感覚も弱まっていったと振り返る。そのうえで注意を身体全身に広げ、今ここで生じる感覚に丁寧に気づき続けた。

心が静まり、身体の感覚が澄んでくると、1つの思考が身体にどんな感覚を生じさせ、どう広がるかが手に取るようにわかるようになったという。動画の終盤では、この深い身体感覚とともに世界を捉え、日々の意思決定を重ねることで、世界や自分自身とより調和した生き方に近づけると締めくくる。

登場エンティティ・コンセプト

  • masahiro-fujino — 身体感覚とマインドフルネスを研究・実践の両面から語る登壇者。
  • tedx-kyoto-university — 京都大学を舞台にしたTEDxイベントで、本動画の発表の場。
  • mindfulness — 感覚・感情・思考に振り回されず、今ここで生じる経験に気づいている状態。
  • bodily-sensation-awareness — 身体に生じる微細な感覚へ注意を向け、判断や感情との関係を見直す実践。
  • meditation-retreat — 会話やデジタル機器を断ち、長時間の瞑想を通じて注意と気づきを育てる集中的な場。

印象的な引用

足が痛いという状態から、足に痛みがあるなぁという状態に変わっていく感じです。

マインドフルネスというのは、今ここにある感覚や感情や思考にきちんと気づくということなのです。

深い身体感覚とともに世界を捉え、日々の意思決定を積み重ねていくことができるようになれば、世界とも自分自身ともより調和のとれた生き方ができるようになっていきます。