ボストロムのシミュレーション論法

ニック・ボストロムが論文で示した、シミュレーション仮説を確率論で支える議論。次の3つの可能性のうち少なくとも1つは真だとする。

  1. 文明はシミュレーションを実行できる技術水準に達する前にほぼ必ず滅びる
  2. その水準に達しても、あえて多数のシミュレーションを走らせない
  3. 実行する

ボストロムは①②を退け③が最有力と考える。技術到達前に必ず滅ぶ明確な理由はなく、あらゆる文明が一様に倫理的理由で実行を控えるとも考えにくいからである。③が正しいなら、たとえば生身の人間が70億人いる世界が無数のシミュレーション(各70億人規模)を走らせ、シミュレーション内の人口が天文学的に膨らむ。すると、いま自分が生身である確率は確率論的にほぼゼロになる、と結論する。

動画 8uc1uzq2PRc では富島がこの筋道を紹介し、計算量の試算(ボストロムはムーアの法則が133年続けば達成可能とする)も触れる。青木は、ボストロムがテレビで用いたハムレットの初演の比喩(無数の上演のどれが何回目かを特定できないように、自分が「初演=現実」だと示す術がない)を引きつつ、これが無限後退の難点と結びつくと指摘する。