浅田彰の「構造と力」を解説【哲学】現代思想のチャート式総復習
概要
浅田彰の『構造と力』を、構造主義からポスト構造主義への流れに沿って解説する。人間は自然の秩序からずれた存在であり、そのカオスを抑えるために象徴秩序を作る。動画はソシュール、ラカン、ドゥルーズ=ガタリの議論を経由し、近代資本主義をクラインの壺として整理する。終盤では固定的な生き方から逃走し、リゾーム的に生きるという提案を扱う。
要点
- 『構造と力』の「構造」は、自然界の仕組みではなく、言語や文化を成り立たせる恣意的・差異的な象徴秩序を指す。
- 人間は自然の秩序から過剰にはみ出した存在であり、象徴秩序はカオスを抑えながらも完全には消去できない。
- ラカンは、想像界の欠如と承認闘争から象徴界が生成する過程を示し、静的な構造主義を更新した。
- ドゥルーズ=ガタリは社会をコード化、超コード化、脱コード化で整理し、近代資本主義を欲望の流れによる動的安定として捉える。
- 近代人は未来の利益を追い続けるクラインの壺に回収される。浅田はそこから逃走し、リゾーム的に生きる道を提示する。
- 解説者は、逃走や遊牧という語彙が現代では一定程度流通している一方、利益を未来へ先送りする習慣は今も根強いと述べる。
構造化サマリ
『構造と力』を読む意味
1983年刊行の『構造と力』は、人文書として十数万部を売り上げた。動画は、構造主義とポスト構造主義を整理できること、主体や言語の成立を考えられること、社会のパターンから逸脱する生き方を検討できることを読書の利点として挙げる。
「序にかえて」では、大学の硬直した作法を批判し、「ノリつつシラケる」姿勢を評価する。ひたすら同調することも、冷笑して動かないことも避ける、ニューアカ的な戦略として紹介される。
自然からずれた人間と象徴秩序
生命はエントロピー増大に抗い、一定の意味と方向を持つ自然の秩序、すなわちピュシスを維持する。動画はマダニを例に、限られたシグナルへ定型的に反応する生命の仕組みを説明する。一方、人間は刺激に多様な反応を示し、倒錯的にも振る舞う。この自然からのずれを浅田は excess と呼ぶ。
カオスに投げ込まれた人間は、文化の秩序を作らなければ生きられない。ソシュールの言語学では、語の意味は単独で成立せず、他の語との差異で決まる。動画は丸山圭三郎の風船の比喩を使い、構造が恣意的・差異的で、全体として同時に成立することを示す。
構造の外部とラカン
構造主義は象徴秩序を分析したが、その外部に残るカオスを見落としやすい。動画はクリステヴァの symbolic と semiotic、祭りにおける秩序と混沌の往復、バタイユの反復運動を紹介する。ただし、これだけでは秩序の生成過程や近代社会を十分に説明できない。
ラカンは、乳児の想像界、鏡像段階、他者からの承認、承認闘争を経て、大文字の他者としての象徴界が導入される過程を示す。象徴界は欠如を埋め切らず、主体の欲望を吸収し続ける。浅田はラカンを、完成済みの構造を眺めるだけでなく、構造の生成と外部との相互作用を追跡した思想家として評価する。
コード化から脱コード化へ
動画はドゥルーズ=ガタリの議論を使い、社会形式をコード化、超コード化、脱コード化に分ける。コード化では贈与と返礼が負債の連鎖を作る。超コード化では王のような絶対的債権者が現れ、民衆を共通の負債へ従属させる。
近代資本主義では固定的なコードが弱まり、欲望は資本と貨幣の方向へ流される。各人が未来の利益を求め、生産性や交換へ向かうことで、社会は動的に安定する。権力者が消えても規律は超自我として内面化され、主体は自らを監視する。
クラインの壺からリゾームへ
近代資本主義は、商品が貨幣へ変わり、その貨幣が再び商品生産へ投下されるクラインの壺として描かれる。現在の享楽を先送りし、未来の利益や理想の自己を追い続ける運動が、人間の過剰な欲望を一方向へ吸引する。
浅田彰は、この固定的でパラノイア的な生き方から逃走し、リゾーム的に生きることを提案する。中心や単一のアイデンティティに定住せず、異質な線が交錯する網状の流れを移動する発想である。動画は、流動的な働き方が増えた現代でも、利益を未来へ先送りする近代的な習慣は残ると締めくくる。さらに学ぶための読書として、ドゥルーズ=ガタリ『千のプラトー』と浅田彰『逃走論』を挙げる。
登場エンティティ・コンセプト
- asada-akira — 『構造と力』で構造主義以後の思想を整理し、逃走を提案した批評家。
- structure-and-power — 構造とその外部の力、近代資本主義、逃走を論じる浅田彰の著書。
- jacques-lacan — 想像界、鏡像段階、象徴界、欠如を通して主体の成立を論じた精神分析家。
- gilles-deleuze — ガタリとともにコード化、脱コード化、リゾームを論じた哲学者。
- symbolic-order — 自然の秩序からずれた人間が文化と言語によって形成する秩序。
- coding-overcoding-decoding — 社会の安定様式をコード化、超コード化、脱コード化で捉える枠組み。
- klein-bottle-model-of-modernity — 商品と貨幣が循環し、欲望を未来の利益へ向け続ける近代資本主義のモデル。
- rhizome — 固定的な中心や階層を持たず、異質な線が交錯する網状のあり方。
印象的な引用
ずっとノリ続けるのは自分を批判的に見る目がなくなってしまいますし、ずっとシラケていても物事が前に進まずやる気も出ません。
人間は生命であるのは確かですが、生命の秩序、自然とはずれている反自然的存在なのです。
ひたすら逃げることを推奨します。秩序の外へ出ることを逃走すること、ずれをずれとして肯定すること。