言語化に興奮するタイプの人間は、文章で惚れちゃう【ビジュアルシンカー2】#323

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概要

ゆる言語学ラジオが、視覚思考言語思考の違いを、恋愛、仕事、創作、会議の評価に広げて語る回。堀元見は文章や歌詞の言語化能力に強く惹かれる自分を掘り下げ、水野太貴は言語能力が社会的評価を過剰に押し上げる構造を相対化する。終盤では『ビジュアルシンキングの脳』や動物の思考にも触れ、言語を万能の上位能力と見る価値観を疑う。言語化できる人が頭がいいのではなく、言語化を頭の良さとみなす社会にいる、という視点が軸になる。

要点

  • 言語化が苦手な人を劣った存在と見るのではなく、言語化が得意な人に有利な社会設計として捉え直す。
  • 堀元は、文章や歌詞の表現力だけで人を好きになれるほど、言語化能力に強い魅力を感じると語る。
  • ゆる言語学ラジオの強みは、考えてから話すよりも、話しながら高速に考える「極端な言語思考者」の芸にある。
  • 絵、装丁、レタリングなど非言語的な課題では、言語優位の人も無力感や評価の残酷さに直面する。
  • 会議で発言しない人を無価値とみなすビジネス言説は、言語化できる人の基準を普遍化している。
  • 言語、絵、動物の認知、プログラミング言語などを横断し、思考様式ごとに信頼できる媒体が異なると整理する。

構造化サマリ

言語化に惚れる感覚

前回のビジュアルシンカー論を受けて、2人は「言語化できること」が過大評価される社会を話題にする。言語化が苦手な人を能力の低い人と見るのではなく、言語で成果を示しやすい人が有利な環境として見る必要がある、という導入。

堀元は、マッチングアプリや文章を通じて人に惹かれる自分の傾向を語る。骨しゃぶり、池澤春菜、江國香織、ヤマザキマリ、日食なつこなどの文章や歌詞に触れ、うまい言語化が恋愛感情に近い興奮を引き起こすと説明する。

江國香織『取るに足らないものもの』のパンケーキのエッセイでは、「幸せで殴り倒す行い」という表現が例に挙がる。単なる内容ではなく、曖昧な感覚をぴたりと言葉にする力そのものに惹かれる、という自己分析につながる。

言語思考者としての番組

水野は、自分は言語処理だけが高く評価され、生活能力の低さが社会的評価で覆い隠されていると話す。言語能力が高い人は、社会の評価制度にうまく乗れているだけかもしれない、という自己相対化が入る。

2人はゆる言語学ラジオの受け方を「言語化ヤクザ」性として整理する。考えてから話すのではなく、話しながら考えが走るため、長時間収録も苦にならない一方、編集時に無茶な発言へ気づく危うさもある。

視覚思考者が絵で会話する番組があれば珍妙に見えるように、ゆる言語学ラジオも極端な言語思考者の見世物として成立している。ここで、言語化の能力は普遍的な知性ではなく、特定の思考様式の突出として位置づけられる。

非言語課題で露呈する弱さ

後半では、言語思考者が非言語的な課題に置かれたときの痛みへ話が移る。シェアハウスの壁に絵を描かされた経験では、首の長すぎるキリンをボケとして描いたつもりが「自由さ」と受け取られた。

出版社入社時には、純文学の装丁案を作る課題で同期から「クリエイティブ舐めない方がいいよ」と言われた経験が語られる。中学時代の新聞課題でも、本気で作ったレタリングを手抜きと評され、言語以外の表現形式では努力すら正しく伝わらない場面があった。

これらの例は、言語化が苦手な人だけが苦しむのではなく、どの思考様式にも不得意な媒体があることを示す。評価する側の基準が一つの媒体に偏ると、その媒体で表現できない能力が見えなくなる。

言語優位社会への批判

会議で発言しない人を無価値とみなすビジネス言説も、言語化できる人に有利な基準として批判される。発言できる人が頭がいいのではなく、発言できることを頭の良さとみなす社会にいるだけ、という整理。

ここで話題は『ビジュアルシンキングの脳』テンプル・グランディンに広がる。動物の思考、鈴木俊貴や山極寿一の言語批判、難解プログラミング言語の例を通じて、言語は万能でも上位でもないと確認する。

終盤では、思考様式ごとに信頼できる媒体が異なるという見方に落ち着く。言語化は強力な道具だが、世界を捉える唯一の窓ではない。言葉にしやすいものだけを知性と呼ぶ態度そのものが、動画全体を通じて疑われる。

登場エンティティ・コンセプト

  • yurugengo — 言語学や認知、学問雑談を扱うチャンネルで、この回では言語思考者の自己相対化を行う。
  • horimoto-ken — 文章や歌詞の言語化能力に強く惹かれる自分の特性を語る出演者。
  • mizuno-daiki — 言語処理能力が社会的評価を押し上げる構造を、自身の生活能力の低さも交えて語る出演者。
  • temple-grandin — 『ビジュアルシンキングの脳』の著者として参照され、視覚思考の理解に関わる人物。
  • visual-thinking — 絵やイメージを中心に考える思考様式で、言語優位社会を相対化する軸になる。
  • verbal-thinking — 言葉で考え、話しながら思考を進める様式で、2人の番組運営や魅力の源泉として扱われる。
  • visual-thinker-brain — 視覚思考者を理解するための参照文献として登場する概念ページ。

印象的な引用

文章を読んでこの人好きってなれる。

言語化ができると頭が良いとされる社会に生まれ落ちた人がいるが多分正解。