moon没エンディングの真実【作者が語る秘話】
概要
moon のROM内に残っていた「竜のしっぽ」マップが、なぜ没エンディングとして流通したのかを作者側の視点から語る回。実際にはエンディングそのものではなく、夢見の儀式から現実・ゲーム・夢・死後の世界をつなぐ中間イベントだった。制作途中でモンスターの魂がUFOで月へ運ばれる案が生まれ、終盤の構成が大きく変更された。宮沢賢治 や カルロス・カスタネダ からの影響も含め、現実とゲームの境界 をどう物語化しようとしていたかが明かされる。
要点
- ROM内の「竜のしっぽ」は、当時は解析される想定が薄く、マップ接続やイベントを軽く外しただけで残っていた。
- 公開された謎の展開は没エンディングではなく、終盤へ向かう前段階の夢見イベントとして構想されていた。
- プレイヤーはフローレンスとの関わりを通じて夢の中を歩き、鏡2枚と鳥居を使って自力で「竜のしっぽ」へ戻る予定だった。
- 制作中にモンスターキャッチの魂をUFOで月へ運ぶ案が生まれ、月の世界と勇者の終盤展開へ方向転換した。
- 「竜のしっぽ」は、現実世界・ゲーム世界・夢・天国・地獄の狭間として、両方の世界の魂が通過する場所だった。
- 発想の背景には『銀河鉄道の夜』やカルロス・カスタネダの本にある、死者や別レイヤーの現実への想像力があった。
構造化サマリ
ROMに残った没データの経緯
動画は、moon の中に「没エンディング」が存在したとされる話題の説明から始まる。YouTube やニコニコ動画に、デバッグマップ経由で「竜のしっぽ」という未使用マップへ入る映像が出回り、ファンの間で「これは何か」と話題になった。
作者は、そのマップがROM内に残っていた理由を、当時は後年の解析を想定していなかったためと説明する。マップのつながりやイベントデータを外しておけば十分だと思い、公開予定のないデータがCD内に残ったままになった。
「竜のしっぽ」は没エンドではなかった
「竜のしっぽ」は没エンディングそのものではなく、物語の中間に置かれる予定だったイベントだった。フローレンスは現実・夢・ゲームの狭間にいる人物で、プレイヤーは夢見の儀式によって夢の中を歩けるようになる構想だった。
夢の中で「竜のしっぽ」へ行った後、目覚めたプレイヤーが現実側の手順を探る。鏡を2枚使って鳥居を合わせ鏡にし、トンネルのように見える場所を通って再び「竜のしっぽ」へ向かう予定だった。そこでは、以前に自分が夢の中で体験した出来事をさらに追体験し、プレイヤーが介入してクリアへ向かう構造が考えられていた。
月エンディングへの急転換
没になった大きな理由は、制作中に別の終盤案が生まれたことにある。モンスターキャッチは当初、捕まえた魂が成仏するような処理だったが、途中でUFOが魂を連れていく案が出た。そこから「UFOキャッチャー」の連想が生まれ、連れていく先は『moon』なのだから月ではないか、という発想につながった。
この瞬間に、魂の行き先を死後の世界ではなく物理的な月にするほうが面白いと判断される。モンスターたちが月にいて、勇者がそこへ殺しに来る構図のほうが分かりやすいと考え、終盤の構成が整理し直された。粘土で月や城を作る必要があり、作り直し後は簡単に巻き戻せない状況だったため、制作はかなり切迫していた。
現実とゲームの接点としての「竜のしっぽ」
作者の中で一貫していたテーマは、「勇者の正体」と「現実とゲームの関係」だった。「竜のしっぽ」もその発想から生まれた場所で、現実世界の人間もゲーム世界のモンスターや勇者も、死後に一度通過する狭間として構想されていた。
そこには遭難者、戦争で死んだような人物、落ち武者、モンスターなどが混在する。現実、ゲーム、夢、天国、地獄の間にある場所で、両方の世界の魂が接するというイメージだった。倉島氏にこの狭間の世界を説明し、暗闇の中を歩いていく「竜のしっぽ」のビジュアルが描かれた。
影響源と締め
終盤では、当時の作者が好んでいた作品や本にも触れる。宮沢賢治 の『銀河鉄道の夜』にある、列車内で死者と思われる人々と出会う感覚が、「竜のしっぽ」のイメージに重なっていた。
さらに、カルロス・カスタネダ の本『未知の次元』にも触れ、人間には現実に見えているものとは別のレイヤーがあるのではないかという想像力が刺激されたと語る。動画はコーヒー休憩を挟み、視聴への礼とチャンネル登録の案内で締めくくられる。
登場エンティティ・コンセプト
- moon-rpg — ROM内に残った「竜のしっぽ」マップと終盤構成の変更が語られるRPG。
- miyazawa-kenji — 『銀河鉄道の夜』の死者と旅のイメージが「竜のしっぽ」の発想源として言及される。
- carlos-castaneda — 現実とは別のレイヤーを想像させる本の著者として影響源に挙げられる。
- cut-content — ゲーム内に実装途中または削除済みの素材が残り、後年発見される問題を整理する概念。
- game-reality-boundary — 現実世界とゲーム世界がどこで接するのかという、moon の物語上の中心テーマ。
- reincarnation — 魂の行き先や死後の通過地点をめぐる発想とゆるく接続する概念。
印象的な引用
あれは、没エンドではなくて、没エンドの1個手前?
「月の世界はきっと粘土でできてるんだろうなぁ」
ゲームと、現実と、夢と、天国と、地獄の間みたいな場所があって。