人工生命概論 第3回:生命のパターン(セルラーオートマトン)

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概要

単純な局所規則から複雑な時空間パターンを生むセルラーオートマトンを解説する講義。一次元モデルのルール番号と Wolfram の4分類を確認し、秩序とカオスの間にあるカオスの縁を扱う。後半ではライフゲームのグライダー、複製、自己言及を通じて生命らしさを考える。最後に、ノイズへの弱さを踏まえ、人工生命研究が実世界のロバストなシステムへ向かう可能性を論じる。

要点

  • セルラーオートマトンは、格子状のセルを近傍の状態に応じて一斉更新する計算モデル。
  • 一次元モデルでは8通りの近傍状態への出力を二進数として読み、ルール30などの番号を付ける。
  • Stephen Wolframは出現パターンを固定、周期、カオス、複雑な局在構造の4クラスに分類した。
  • カオスの縁に位置するクラス4は、生命のような複雑現象との関連で注目された。
  • ライフゲームでは、移動するグライダー、グライダーガン、自己言及的な構造まで作れる。
  • 人工的に設計したパターンは1セルの欠損でも壊れやすく、現実の生命が持つロバスト性とは隔たりがある。

構造化サマリ

生命らしいパターンを作る単純規則

前回扱った Gray-Scott モデルとは別に、離散的なセルの更新からパターンを作るセルラーオートマトンを導入する。ルール30、ルール90、ルール110の時空間パターンは、局所規則だけから縞模様や複雑な構造を生む。

二次元モデルの代表例がJohn Horton Conwayライフゲーム。生と死を繰り返すセルから、移動するグライダー、グライダーを繰り返し生成するグライダーガン、自分自身をシミュレートする自己言及的構造まで構成できる。動き、複製、自己言及という生命に近い機能が単純規則から現れる点が人工生命との接点になる。

セルラーオートマトンの歴史と基本ルール

起源は1940年代のJohn von Neumannと Stanislaw Ulam の議論に遡る。von Neumann は自己複製するオートマトンを考え、その後Stephen Wolframが1984年にコンピューターを使って一次元モデルの性質を調べた。

各セルは状態を持ち、自分自身と近傍セルの状態から次世代の状態を決める。一次元の二値モデルでは、3セルの組み合わせが8通り存在する。各組み合わせへの出力を二進数として並べ、十進数へ変換した値がルール番号になる。ルール30なら出力列は 00011110 で、利用可能な規則はルール0からルール255までの256通り。

Wolfram の4分類とカオスの縁

Wolfram は時空間パターンを4クラスに整理した。クラス1は消滅または固定化、クラス2は周期構造、クラス3は非周期的でカオス的な模様、クラス4は時間と空間に局在する複雑構造を示す。クラス4は秩序とカオスの中間にあり、自然界の貝殻の模様にも似たパターンが見られる。

Christopher Langtonは規則の出力比率を表すラムダ・パラメーターを導入し、クラス4をカオスの縁として分析した。クラス4のセルラーオートマトンが万能チューリングマシンになり得ることから、進化が複雑性を増すならカオスの縁へ向かうという議論も生まれた。ただし、講義ではこの議論が厳密さを欠く点にも注意を促す。

ライフゲームの構造

ライフゲームでは、セルの上下左右と斜めを含む8近傍を参照する。生きたセルは近傍が少なすぎると過疎、多すぎると過密により死ぬ。近傍に生きたセルが2つまたは3つあれば生存し、死んだセルは近傍がちょうど3つなら再生する。

初期状態によって、変化しない安定パターン、周期的に戻るオシレーター、空間を移動するグライダーなどが生まれる。グライダーガンのような意味のある構造を作るには、人間が初期状態を設計する必要がある。

ロバスト性という限界と今後

von Neumann は電気回路を設計するように初期状態を組み、自己複製や計算機能を実現できることを示した。一方、グライダーガンは1セルを削除するだけで機能を失う。ノイズに耐える現実の生命とは大きく異なる。

講義では、2008年頃から人工生命研究の関心がソフトウェアだけのシミュレーションから、実世界で動作するロバストなシステム設計へ移ったと説明する。ハードウェアと自己組織化パターンを共進化させることで、生命の柔軟さ、超並列性、ロバスト性を持つ仕組みを構築できる可能性がある。次回は自己複製を扱う。

登場エンティティ・コンセプト

  • cellular-automaton — 局所的な更新規則から複雑な時空間パターンを生む計算モデル。
  • conways-game-of-life — 生存、死、再生の規則で動く二次元セルラーオートマトン。
  • edge-of-chaos — 秩序とカオスの間で複雑な構造が現れる領域。
  • john-von-neumann — 自己複製オートマトンを構想した数学者。
  • stephen-wolfram — 一次元セルラーオートマトンのルール番号と4分類を提示した研究者。
  • john-horton-conway — ライフゲームを提案した数学者。
  • christopher-langton — ラムダ・パラメーターでカオスの縁を分析した人工生命研究者。

印象的な引用

とても単純な規則の組み合わせで、例えば動きであったり、複製であったり、自己言及という生命の基本原理に似た機能を生み出すことができます。

完全にランダムでもなければ、完全に周期的でもありません。

ここがセルラーオートマトンの限界であり、実際の生命と大きく違うところでもあります。