【ゆっくり解説】進化論最大の誤解:種の存続:群れは進化するのか?【 科学 / 進化 】
概要
レミングの集団自殺という俗説を入口に、種の存続という誤解を解説する。進化は生物が目的を持って起こすものではなく、自然選択によって機械的に進む。利他的な群れの成立が難しい理由を示し、群選択、血縁選択、マルチレベル選択の議論へ展開する。終盤では科学の守備範囲と、生物の心や意識という未解明の問いにも触れる。
要点
- レミングが種の存続のために集団自殺するという説明は誤り。映像として知られる事例には人為的な演出があった。
- 種全体の個体数や環境を把握し、犠牲になる個体を決める仕組みは現実的ではない。
- 利他的な個体だけの集団に利己的な個体が入ると、利己的な個体が有利になり、自然選択で増える。
- 科学は目的論より機械論を採用する。生物の意志を仮定しなくても、遺伝子を多く残す特徴の拡大を説明できる。
- V. C. Wynne-Edwardsの群選択は批判されたが、利他行動の説明を深める議論に貢献した。
- 群れ単位の進化を扱うマルチレベル選択も提唱されているが、血縁選択との関係には議論がある。
構造化サマリ
レミングの集団自殺という俗説
動画は、同種を繁栄させるために生物が行動するという「種の存続」の考え方から始まる。代表例として、個体数が増えすぎたレミングが餌不足を避けるため、集団で崖から飛び降りるという俗説を紹介する。
しかし、種の存続を目的とした自殺には高いハードルがある。レミングは広範囲の個体数、餌、捕食者、気候を把握し、適切な個体数と犠牲になる個体を決めなければならない。種の境界自体も連続的で曖昧なため、種の存続という説明は成立しにくい。
1958年の映画で知られる映像には、人がレミングを崖から落とした演出があった。レミングの移動は、生息密度の上昇に伴う分散として説明でき、泳ぐ能力もある。
利己的な個体が増える仕組み
種のために命を投げ出す利他的な個体だけで集団を作っても、利己的な個体が生まれるか外部から入れば状況が変わる。利己的な個体は自殺せず、利他的な個体から利益を受けるため、相対的に多くの子孫を残す。
この変化は自然選択として機械的に進む。個体が遺伝子を残したいと考えているかどうかは関係ない。突然変異によって生じた有利な特徴が、生存率と繁殖成功の差を通じて次世代に広がる。
目的論ではなく機械論
生物の行動は、目的を持つように見えることがある。しかし科学では、確認できない目的や意志を前提にせず、観察可能な差から仮説を立てる。動画では、この立場を目的論に対する機械論として説明する。
ラプラスがナポレオンに神について尋ねられ、「その仮定は必要ない」と答えたという逸話も紹介する。これは超越的存在の否定ではなく、科学の方法で確認できない要素を理論に組み込まないという態度を示す。科学的知識は意思決定に役立つが、個人が何を信じるかまで決めるものではない。
群選択と血縁選択
種より小さい群れを単位に考えると、全体の状態を把握できる可能性は上がる。1960年頃、V. C. Wynne-Edwardsは群選択を提唱し、群れ同士の競争が協力行動を進化させると考えた。
ただし、利他的な群れに利己的な個体が現れると、その個体が有利になるという問題は残る。血縁者を助ける行動であれば、血縁選択で説明できる。Wynne-Edwardsは主張を撤回したが、群選択をめぐる議論は利他行動の研究を前進させた。
近年はマルチレベル選択も提唱されている。動画では、突き詰めると血縁選択と同じになるという見方を紹介しつつ、今後の発展可能性にも触れる。
科学の限界と未解明の問い
終盤では、映画『アルマゲドン』の自己犠牲を例に、他者のために命を懸ける行動が称賛されるのは、それが稀だからでもあると指摘する。一方、生物の行動を機械的に説明するだけでは割り切れない感覚も残る。
イヌ、ネコ、鳥などにも心や意識があるのかという問いは未解明であり、そもそも心や意識の定義自体が難しい。動画は、科学の説明が真実そのものとは限らず、新たな知見で変わり得ることを確認して締めくくる。
登場エンティティ・コンセプト
- vc-wynne-edwards — 群れ単位の生存率に注目し、群選択を提唱した動物行動学者。
- species-preservation-fallacy — 生物が種全体の存続を目的に行動するという、直感的だが成立しにくい説明。
- natural-selection — 生存や繁殖に有利な遺伝的特徴が、個体の意志とは無関係に広がる仕組み。
- group-selection — 群れ同士の競争によって協力的な特徴が進化すると考える理論。
- kin-selection — 血縁者を助ける行動を、共有する遺伝子の拡大から説明する理論。
- multilevel-selection — 個体だけでなく、複数の階層に働く選択圧から進化を捉える理論。
印象的な引用
生き物には同種であっても、生存に有利な特徴を持つ個体もいれば、不利な特徴を持つ個体もいる。
あると分かったことだけで世界を説明するというのが、科学のルールなんだ。
正しいものだけが科学を進めるわけじゃないんだよ。